成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

「人材流出防止」のマネジメント待ったなし。キーワードは「社内起業」と「暖簾分け」。

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新卒採用市場が「売り手市場」に転じただけでなく、初めて全都道府県で有効求人倍率が1を超えるなど、大して景気が良いわけでも、経済の先行きが明るいわけでもないにのに、現下の労働市場の需給は逼迫しています。

 

これは一時的な現象ではなくて、今後短期的な変動はあるにしても、中長期的に固定化していくものと考えられます。団塊の世代が「生産年齢人口」から完全に卒業し、それに続く世代もどんどんリタイアしていく一方、「生産年齢人口」に新たに加わる人口は少子化でどんどん減っていくわけですから、経済が仮に「ゼロ成長」でもマクロの人手不足は深刻度を増していくでしょう。

 

「採用できない企業」は現在も多いわけですが、今後は次第に「人材流出が止まらない企業」が顕在化してくるようになるでしょう。給与水準を引き上げてそれを防止する企業もあるでしょうけど、それは経営を圧迫していく要因ですし、結局は対症療法でしかありません。

 

もっと根本治癒に近い、企業にとっても、働く者にとっても有益な解はないかと思いを巡らしている人は少なくないはずです。

 

その解の一つになりそうなものとして、前回の投稿では「働き方」でベネフィット出していこうという観点から、「フレックスタイム制」の再考の話をしました。そして今回は「キャリアパス」でベネフィットを出していく「社内起業」「暖簾分け」を取り上げたいと思います。

 

「優秀な人材が欲しい。良い方法はありませんか」という経営者や人事部長からのご相談は常々あります。それならと圧倒的に仕事に対する意識が高く、取り組み姿勢の優れている「独立志向」「起業志向」の人材を、採用に際して歓迎・優先的に採用する方針を打ち出せばどうかとアドバイスしますが、たちまち「とんでもない。そういう人は協調性がなくて…」とネガティブな意見を口にする企業が今でもやはり大半です。

 

また、「独立志向、起業志向の人間なんか採用したら、多くの人間が辞めて人材育成投資が無駄になるじゃないか」という企業もあります(大して人材育成投資なんかしていない会社ほどそう言います(笑))。

 

どちらの心配・懸念も理解できないわけではありません。しかし「独立志向」「起業志向」だから協調性がないというのもあまりに断定的ですし、そういう人材を使いこなし能力を引き出していくことこそ本来、中間管理職、マネージャーの役割です。また、「独立志向」「起業志向」の人材を採用したからといって、皆が実際に独立・起業というアクションに向かうわけではなく、上手い仕掛け用意すれば、企業内やグループ内に留まって力を発揮し、次代を担う経営人材として育てていくことも可能で、実際にそうしたアプローチに成功している企業もないわけではないのです。

 

入社から一定の経験を経てあるレベルのスキルや経営感覚を身に付けた社員に、子会社の経営を担う資格を与え、グループ内での新規事業立ち上げ時は、有資格者から新会社の経営人材を公募するという「社内(グループ内)起業」を人事制度化している会社があります。こうしてある意味「クラウンプリンス」としてトレーニングを重ねた人材がやがてはグループ全体の経営を担うというのは実に理に適った経営システムです。プロ経営者の外部招聘がなかなかうまく機能しない日本企業においては、それに代わる優れた後継人材輩出システムともなります。

 

もっと身近な仕組みで言えば、外食産業などで多い「暖簾分け」というのも、まだまだ研究の余地がある人材育成システムだと思います。独立心旺盛でパフォーマンスの高い人材を、「暖簾分け」によって、まず資本関係を維持しながらグループ内で起業させる。そして場合によっては、ブランドの共有・協同仕入れ・協同事務管理といったパートナーシップへと昇華させていくというのも、業種業態によっては非常に有効で、労使ともに得るところが大きいでしょう。

 

こうした仕組みを上手く労使関係に落とし込んでいければ、「人材流出防止」としても、そして「質の高い採用」のための採用ブランド構築という意味でも、絶大な効果上げます。

 

「社内起業」も「暖簾分け」も、成果を生み出すまでの我慢は確かに必要でしょう。しかし、カネがかかるというよりは、ものの考え方を変える、もっと言うとオーナーシップの射程距離を変えるという要素が強いものです。その意味では、取り組むことができる企業の裾野は広いというべきでしょう。

 

これからの労働力不足時代に対応していくオプションとして、経営者、人事責任者は絶えずこのあたりのことを意識されると良いのではないかと思います。

 

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