成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

成長する組織の「人材マネジメント」は「政略」「戦略」「戦術」の三つのレベルで考える。

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高校時代に、受験勉強も放り出して司馬遼太郎歴史小説にはまった時期がありました。普通の司馬ファンというのは『竜馬がゆく』から入っていくのでしょうけど、私の場合、何度も読み返したという意味では、幕末の洋学者で戊辰戦争の新政府軍を指揮し、短期間に内戦を終わらせることに成功した革命仕上げ人・大村益次郎村田蔵六)が主人公の『花神』という小説が最初だった様に思います。

 

この『花神』で知ったのが「政略」「戦略」「戦術」という概念。今から150年前に、これを明確に区別し、整理できる日本人が居たというだけでもちょっと驚きですけれど、今日でもビジネスにおいてこれを展開し活かすというのは、とても効果的である一方、難易度の大変高い事だと思います。

 

ですが、「経営目標の達成」のためにはもちろん、それを実現に導く「部分」、例えば「営業力強化」とか「製品の企画開発力向上」、さらにはその前提としての「人材レベルの飛躍的な引き上げ」といった経営課題を克服し、射程距離の長い経営の礎を築くには、やはり欠かせない整理というか、アプローチなんだろうと思います。

 

最後に挙げた「人材レベルの飛躍的な引き上げ」については、私もIPOを視野に入れた企業で管理部門を預かり、それが求められるポジションでの仕事を経験しましたから、この三つを仕分けして、事にあたることの重要性と困難さは身に沁みているつもりです。

 

人材マネジメントにおける「政略」とは何か。それは突き詰めれば、「採用ブランド」の創造・構築につきると思います。

 

もちろん、人材育成のための人事評価制度や教育研修は重要です。少なくとも日本国内での事業活動のウェイトが高い企業で言えば、徐々に変化しつつあるとはいえ、国内では明確な「職務ベース」の外部労働市場・人材流動に過度に依存することができませんから、人材の内部育成は依然重要性を失っていません。特にニッチな市場や技術で勝負していく企業ならば、なおの事そうなるわけです(そもそも同業から人材を獲得するというのが難しいわけですから)。そのために個人のモチベーションを高める評価の仕組みや自身のエンプロイアビリティ高める教育研修、さらには組織全体の士気が高まる仕掛けが要請されることになりますが、それは料理おける「調理」に相当する部分。「調理」に負うところは確かにあると言えど、絶対的な「素材」の良さ(高級かどうかではない)については、やはり貪欲に追求したいところなわけです。そのためには「採用」の母集団たるキャンディデート(応募者)の数というのはある程度必要になります。組織毎の状況は違えど、「量が質を生む」というのは採用活動の鉄則。そのためのキャンディデート数確保には、「採用ブランド」の確立が急務となります。

 

BtoCのメーカーの様にキャンディデートからみてわかりやすい企業、デザイナーとかプランナーとか見るからに格好良さそうな職種というのであれば、将来有望とか、絶好調の業績という企業でなくても、意外と応募者数を集めることができるのが「採用」の不思議なところです。逆に言えば、成長力があり、20年先はともかく10年くらいは磐石と言えるような企業でも、候補者の母集団形成に苦しむのが「採用」の怖いところなわけです。

 

特にBtoBの企業などは、企業規模、将来性、処遇などが優れているというだけでは、なかなか「採用ブランド」の形成にまで至りません。自社のビジネスを一般の人からも分かり易く、そして仕事のイメージもわき易く伝える、そのために興味・関心を喚起できる様な手法を編み出し、早期に独自の認知を得るアプローチが欠かせないと思います。

 

長くなりましたので「戦略」「戦術」については、また稿を改めるとして簡単にしか触れませんが、人材マネジメントにおける「戦略」というのは、3~5年で効果が出やすい「採用の人員配分」や「教育研修の組み立て」と考えれば良いのではないかと私は思います。前者はいずれは新卒中心でいくとしても、まずは若年層を育てられるミドルを中途採用で厚くするとか、年代構成的に手薄な20代中盤~後半を補強するため、第二新卒の採用に注力するとかいったことです。それに応じて後者の求められる教育研修メニューなどは当然変化させねばなりません。

 

「戦術」について言えば、採用した人材に一定の研修を施した後誰に預けて育てるか、人事評価制度を通じた目標管理やフィードバックをどう進めるのが効果的かなどがそれにあたるでしょう。

 

いずれにせよ、これら三つのレベルが最終的には矛盾することなく連動し、一つのストーリーとして描かれている組織の人材マネジメントは、誰の目にも分かり易く、それだけでも人を惹きつける、働いてみたいと思わせる魅力的なものになるはずです。

 

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