成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

シリーズ「次世代型人事労務管理を求めて」 ①「メンバーシップ型(組織構成型)雇用」とは何か

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週一位のペースで、シリーズ「次世代型人事労務管理を求めて」と題して書いていきたいと思います。今日はその第一回で、人事労務管理の前提となる「雇用のあり様」についてです。人事のプロですとか、人事コンサルですと自称する人は、この議論をすっ飛ばして、ほぼ米国のビジネススクールの出来の悪い教科書から引っ張ってきた単語をならべて持論を展開しますが、実際の経営側から見ればそれが的を射ていることが少ないのは、そのためだと思います。

 

欧米流の人的資源管理をそのまま日本に持ち込んでも上手く機能しないという話は、繰り返しこのブログでも書いていますが、その根幹には日本とそれ以外の国では、雇用のあり様が正反対であり続けてきたという歴史があります。

 

日本型雇用と言われる「メンバーシップ型(組織構成型)雇用」は、原則「人に仕事を貼り付ける」ものであって、採用した人材に、ジョブローテーションを通じて複数の職務経験させながら、それら職務に必要な「スキル」「技術」を身につけさせていきます。従って「採用」も「人事評価」も、原則、属人的な「職務遂行能力(潜在能力)」を基準としており、社内には複数の職務を経験した柔軟な人材がいるはずですから、仮に欠員補充が必要な事態になっても、基本的にはそれは社内でカバーされます。

 

少し脱線しますが、事業拡大等に伴う増員のための中途採用は兎も角、詳細な職務記述とそれに必要又は望ましい「スキル」「技術」を掲げた中途採用募集というのは本来例外的なものであり、それが頻発したり、管理職で発生したりする組織は、人材の層が薄いとか、マネジメントが上手くいっていない組織であることを、露呈しているようなものなわけです。

 

「メンバーシップ型(組織構成型)雇用」における採用の判断基準は、「職務遂行能力(潜在能力)」ですから、組織の一員としてメンバーシップを発揮してもらえるかどうかの見極めを中心に、そこでは組織内のニーズに柔軟に応えられるか否かが問われます。この基準であればこそ、何の「職業スキル」「技術」もない新卒者を一括採用するということが可能になり、同時に「定年」という強制退職の仕組みもセットすることができるわけです。元々高度成長期に端を発し、オイルショックの様な一時的な危機に際しても、雇用維持が可能なものとして設計されてきた背景を持っているのが「メンバーシップ型(組織構成型)雇用」の特質です。

 

そしてそこから派生して「長期雇用」と「年功賃金」を保障するかわりに、「滅私奉公」を求めるというのも、もう一つの「メンバーシップ型(組織構成型)雇用」の特質として挙げることができます。それが「ブラック企業」を生み出す温床になっているという指摘は、今や定説となっていますが、これについても何れ再検討したいと思っています。

 

詳シリーズの次回で欧米型雇用である「ジョブ型(職務型)雇用」について詳しく書きますが、これは「メンバーシップ型(組織構成型)雇用」とは正反対に「職務に人を貼り付けていく」雇用です。ですから原理原則として職務がなくなったり、「スキル」「技術」的に職務を行うのが難しくなれば、失職することを前提にしています。当然その世界では、職務を行うための「スキル」「技術」を証明するのが困難な新卒者に対して「一括採用」を行うことはなく、新卒者は大学で学んだこととインターンシップにおけるわずかな職務訓練を基に、他の経験者と一緒に欠員補充枠への就職活動を行い、一般的には一番習熟度が低くくても務まるポジションから仕事を始めていくことになります。

 

今の日本の現状で言えば、今回解説した「メンバーシップ型(組織構成型)雇用」も次回に取り上げる「ジョブ型(職務型)雇用」も、純粋な形で導入するのは不可能だろうと思います。

 

本来、日本の中堅以上位の企業では前者が上手く機能してきましたし、今でも部分的には機能しています。「新卒一括採用」が今でも日本の採用のメインストリームであるのはその典型例です。しかし、実際には長期雇用を保障することもできなければ、のんびりジョブローテーションで人材育成をするのも難しくなってきています。それらの企業では、今後なし崩し的にではなく、意識的に前者と後者の「ハイブリッド化」を、時間軸を織り込んで進めていく必要がでてくるでしょう。そしてそれに成功した企業は、一頭地抜きに出る可能性が高くなります。

 

長くなりました。詳しくはシリーズの次回以降で。

 

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