成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

企業の労働紛争早期解決は、「あっせん等の使用者側申立」が決め手。

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昨年来の居酒屋チェーンW、エステチェーンT等の例を見るまでもなく、労働紛争の拙い処理が企業の浮沈さえ左右する様になったのは、近年の企業経営を取り巻く大きな環境変化の一つといえます。少なくとも5年、10年前には、少々の労働トラブルで企業がそこまでのダメージを受けることはありませんでした。

 

WやTの様な豊かな内部留保のある企業なら、労働紛争によって失った社会的信用や人材流出を、時間をかけてリカバーすることも可能かもしれません。しかし、これが中堅・中小・ベンチャーならば一溜まりもないでしょう。

 

このブログでも何度も取り上げている様に、労働紛争を起こさせないリスクマネジメントが最重要なのは言うまでもありませんが、労働集約型の企業を中心に、従業員数が増えれば増えるほど労働紛争の顕在化リスクは高まります。ですからその全てを予防するということは現実には不可能です。

 

そのため、次に重視すべきは、起こった労働紛争をいかに早期に傷を浅くして解決するかということになります。これは今や企業経営にとって避けては通れない危機管理です。

 

当事者間の話し合いで解決できない状況に至ったなら、使用者側にとって有益な唯一無二のソリューションは、非公開かつスピーディ、リーズナブルな解決金で和解が可能な「あっせん等」、すなわち労働紛争における「裁判外紛争解決手続ADR)」で解決を図ることです。

 

この「あっせん等」では、「労働者側申立」のケースが圧倒的に多く、使用者側は「労働者側申立」を受けて立つという構図が一般的です。良識ある多くの使用者側弁護士は「労働者からあっせんの申立があれば受けるべき(あっせん参加すべき)です」とアドバイスします。それは、当事者間で解決不能な状況下で、「労働者側」が「あっせん等」を選択してくる場合は、その労働者が穏当であり、必ず和解の道が開けると知っているからです。労働者側が強固に対決姿勢を鮮明にするなら、使用者側にとって大変手の掛かる、コミュニティ・ユニオンによる団交、労働審判、訴訟を選択することもできるわけですから。

 

しかし、真に企業防衛を考えるならば、この一般的な「あっせん等」の構図をなぞっているだけでは不十分です。この構図では、労働紛争の先手後手で言えば、使用者側は完全に「後手」を踏んでいます。労働者側がいつも穏当な「あっせん等」を選んでくれるわけではありませんし、現在の労働者を取り巻くネット等の情報収集環境から言えば、「和解解決」を前提にしない団交・労働審判・訴訟等にストレートに進む蓋然性は低くはないわけですから、むしろ当事者間解決が不能な状態に至ったら、間髪を入れず、使用者側から「あっせん等」を申し立てるべきなのです。

 

しかし、これを解している人は人事部を含め使用者側には殆どいません。また、そういうアプローチで使用者に働きかける特定社会保険労務士も殆どいないのが現状ではないでしょうか。ですから弊所では、「問題社員対策」を含んでクリティカルな「雇用管理」が求められる状況では、常々この紛争解決手法を説明することにしています。現実に弊所で今「あっせん等」を準備しているのは、このパターンから生じたものが中心で、「あっせん申請書」が受理されることになれば、即時に私が代理人として和解交渉を開始することになります。

 

私は特定社会保険労務士として、このブログとは別に『“労働者側社労士”の視点』というブログを書いているくらいですので、「あっせん等」では、「使用者側」代理人だけでなく、「労働者側」の代理人も積極的にお引き受けしています。ですからこういう投稿をすると、いわゆる「労働紛争ゴロ」や「似非人権派」の士業から、「お前はどちら側の味方なのだ」という様な批判を受けることもありますが、それらは全く的外れな感情論です。

 

私自身は社労士法の目的条文通り、「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上」に資することを前提に、使用者側の案件であれ、労働者側の案件であれ、依頼人に権利の実現と、実質的な利益の極大化のために労働紛争解決業務を行っています。その立脚点に、「あっせん等の使用者側申立」は何ら矛盾せず、企業側にとって最もベネフィットの高い労働紛争解決のオプションであると同時に、相手方となった労働者にとっても、和解に至れば、紛争に費やす時間・エネルギー・精神的負担、さらにはキャリアデザイン等も勘案した、実質的に利益を極大化するオプションになります。

 

とにかく、小難しい議論は横においても、企業防衛としての労働紛争解決を考えるなら、「あっせん等の使用者側申立」はキーワードだと思います。特定社会保険労務士を代理人として、使用者側には是非積極活用して頂きたいスキームです。

 

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オーナー経営者のための組織人事管理① 「ファミリービジネスか?ゴーイング・パブリックか?」

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私は株式公開準備を視野に入れた企業で、何度か管理部門の責任者として仕事をしました。ですから、オーナー経営者が「IPO(株式公開)したい」と突然言い出したら、それが十中八九は証券会社の法人営業の人間等に耳触りのよい話を聞かされて、舞い上がっているに過ぎないと分かるわけですが、普通の会社、普通の経営者はそうは思いません。

 

取引銀行や経営者団体の紹介で、誰しもが名前を知る大手証券会社の法人営業の名刺を持った人間がやってきて、「社長、株式公開をお考えになりませんか?」なんてモーションを掛けられれば、「俺って凄いんじゃね?」「ウチの会社って上場企業になれるくらい力があるのか?」と勘違いしてしまっても無理のないところです。しかし証券会社の法人営業の人間なんていうのは、そもそもそういう勘違いを経営者に起こさせるのが仕事なので、オーナー経営者は、いくら業績好調でも、こういう言葉に振り回されて、経営の舵取りを誤ることのない様、注意する必要があります。

 

もちろん、事業展開上、あるいはファイナンス上、株式公開を目指す(「ゴーイング・パブリック」と言います)方が良い、又はそれが数少ない選択肢の一つというケースもあります。しかし好業績で注目されている企業でも、そうした必然性の無い企業の方がむしろマジョリティなのです。

 

前置きが長くなりましたが、現在、私は特定社会保険労務士をしていますから、主に組織人事面からこの問題に触れるのが本稿の目的です。

 

サントリーみたいな特殊な例を除けば、オーナー家がほぼ100%の株式を保有する純然たるファミリービジネスは、本質的に組織人事面で大きな弱点を抱えています。スポットの中途採用は兎も角、将来を担う人材を広く社会に求め、持続的に採用するということが大変難しいという点です。

 

単純な話、役員やワンポイントリリーフはあっても、トップマネジメントに立つ可能性がほぼゼロの企業に入社することを、大望ある有為の若者ならば良しとはしないでしょう。

 

それに対して、株式公開企業であれば、トップマネジメントに登りつめるには、実力以外の運不運もありますが、少なくとも既述の様なバイアスはかからないわけです。広く世の中に人材を求めるのであれば、すでにパブリック・カンパニーであるか、直ぐにでなくとも将来的に上場を目指すゴーイング・パブリックの企業の方が、優位であるのは間違いありません。

 

これは組織人事面での大きなポイントです。しかし、この点を除くと、実はファミリービジネスにも組織人事管理の大きなアドバンテージがあります。

 

株式公開企業の最強のステークホルダーは当たり前ですが株主です。株主の多くは企業に短期的な利益の極大化を求めます。かつてのハゲタカを持ち出すまでもなく、アジアの片隅の巨大とは言えない企業であっても、上場していれば資本の論理が最優先。その結果、中長期的な視点での事業戦略やそれに沿った組織づくり、人材育成も阻害される可能性があるわけです。しかし、ファミリービジネスにはそういう心配が全くありません。

 

また、ユニクロなどを傘下に持つファーストリテイリングの様に、世の中には上場企業でありながら創業家関連株主で50%程度の株式を保有する、ファミリービジネスとパブリック・カンパニーの折衷形の様な企業もあります。これはこれで問題がないわけではありませんが、上手くやれば双方のメリットを引き出せる可能性があります(逆に下手なマネジメントをやるとマイナス面ばかりが残りますが…)。

 

経営スタイル、創業家を中心とする後継経営体制、経営環境変化への適応力、組織力・人材力の経営資源に占めるウェイト…。殆どは組織人事と切っても切れない事項ですが、企業規模が大きくなればなるほど、オーナー経営者は、これらのバランスの上に、自社をファミリービジネスとして存続させるのか、ゴーイング・パブリックへ導くのかという選択を、慎重にしていくことになります。あまり自覚している経営者は多くありませんが、「株式会社」というのはそもそも、会社法を読めばわかる様に、株式公開する方がむしろ自然な法人形態です。

 

ただ、だからこそ「業績が好調だから」とか、「一度は上場企業を経営してみたかった」という様な理由で、安易に証券会社の口車に乗せられると、後で取り返しのつかないことにもなりかねません。

 

組織は、アクセルを急に踏み込むと思わぬコンフリクトを招きますし、逆に急ブレーキを踏んでも、直ぐには基には戻らないものです。これは成功しているオーナー経営者には特に留意して頂きたい組織人事管理の要諦です。

 

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