成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

政府が“スーパー・フレックスタイム制”を検討中。しかしそれは「大人の組織」にしか使いこなせない。

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政府が、「1ヵ月超」の「清算期間」で運用できるフレックスタイム制のための法改正を検討しているというニュースが流れてきました。これを仮に“スーパー・フレックスタイム制”と名付けることにしましょう。

 

現行の「フレックスタイム制」は「1ヵ月」を上限とする清算期間の総労働時間を定めた上で(もちろん法定労働時間内で)、その範囲内で日々の労働時間を労働者が自由に決めることができる労働時間管理制度であり、今回の改正はこれを「清算期間」を引き延ばすことによって緩和しようといものです。労働時間の柔軟性の高さから、育児や介護への対応を考えても「労働者に優しい」仕組みであるのは間違いないし、眠れる有能な人的資源の顕在化にも有益だろうと思います。

 

しかし、現行のフレックスがわずか現状5%の企業でしか導入されていないのに、清算期間が延びて繁忙期、閑散期といった季節変動要因のある職場で使える様になったくらいで、急激に導入企業が増加したりするものかどうか。本質は別のところにある様に思います。

 

誤解のない様に先に申し上げておきますが、この法改正に私は反対ではありません。あまりフレックス導入企業が増えなくても、法的に認められた選択肢が増えることは、我々実務家にとって、使える絵具が増えるわけですから、別に悪い話じゃありません。

 

問題は旧だろうが新だろうが、「フレックス」の様な柔軟な働き方が機能する前提を考えようということです。

 

フレックスが日本で制度化されたのは1988年4月。既に四半世紀の歴史があるわけです。しかしいまだに5%の企業にしか導入されていない。もちろん業種・業態的に不可能という職場もないわけではありませんが、この程度の普及に留まっているのは、それだけ使いこなせるレベルの組織が少ないということだと思います。

 

今日の様にグループウェアもスカイプもある時代ですから、会議などを極力減らす工夫をすれば、もっと使いこなせそうなものですが、それでもフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが少なくなるフレックスで良い仕事をしようと思えば、メンバー間の「気遣い」が欠かせなくなります。マニュアルにはないけど、伝えたい業務の進め方や行き届いた顧客対応、等々。

 

その意味で、組織の全員でなくても2~3割が「気遣い」のできる大人で構成されている組織でないと、まず「フレックス」は上手く機能しない。これは実際に上手くフレックスが機能している組織と機能していない組織を見た経験で感じるところです。

 

そしてフレックスが機能する条件としてはもう一つ。トップマネジメントが「マイクロマネジメント」を捨てるということを上げることができます。むしろこちらの方がフレックスが成功するための条件としては大きいかもしれません。

 

十分フレックスを使いこなせる様なレベルの組織でも、不安神経症の様なトップマネジメントが、「マイクロマネジメント」から脱皮できず、フレックス制を叩き壊す事例をいくつも見てきました。経営目標達成のための射程距離というか、器というか、トップマネジメントがフレックスを使いこなせるレベルでないなら、断じてこの様な労働時間管理を使うべきではありません。組織に混乱と失望をまねくだけですから。

 

今回の“スーパー・フレックスタイム制”導入の動きを受けて、柔軟な働き方が増えて欲しいという基本的な考えは持っていますが、どの会社でも実現可能という程、これはハードルの低い話じゃありません。

 

人に仕事をはりつける日本独自の「メンバーシップ型雇用」にも修正を加える必要があるかもしれませんし、「大人の組織」を実現できるレベルの高い採用とセットでないとなかなか難しい。ただ、トップマネジメントの成長・脱皮も含んで、もう一段上の組織になるためには、思い切ってこういう機会を活かしてエポックメーカーになるという気概も大切である様な気もしています。

 

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