成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

米国型人材マネジメントは「人のチカラ」に期待しない。自社の人材マネジメントはどうあるべきか?

f:id:obanasr:20140520100123p:plain

従来、日本の経営者には「組織」「人事」に通じた人が多かった言われています。実際今日程経営環境の変化が激しくない時代には、メーカーや商社では、次世代の「経営者」と目される人材に、子会社の社長や人事部門を経験させた後ボードメンバーとし、そこからトップマネジメントに登用するケースが少なくありませんでした。彼らは良くも悪しくも、日本的な組織人材マネジメントを知り尽くし上手く活用してきたわけです。

 

しかし今日そんな余裕のある人事をやっている会社は大企業でも少なくなっています。それどころか、ベネッセの原田さんにせよ、サントリーの新浪さんにせよ、「プロ経営者」を外部から招聘しないと間に合わないくらいになっている。この傾向は今後トップマネジメントから次第にミドルマネジメントへと拡がりをみせていくでしょう。少し前までは「転職35歳限界説」という様なものもありましが、それも今は昔の話になっています。

 

但し、その様な人事が上手く機能するには、乗り越えなければならない大きなハードルがあります。またそのハードルを乗り越えることは、自社の人材マネジメントを大幅に「米国型」へと方向転換することになるのですが、そのことに自覚的であるとともに、それが自社にフィットするものかどうか。今後、この見極めが個別企業の問題としてとても重要になるだろうと思っています。

 

乗り越えなければならない大きなハードルとは何か?お分かりになりますか?

 

それは、雇用形態、人事評価、賃金報酬などを全て「職務ベース」に変更していく必要があるということです。特定の「職務」に限定されない雇用形態(部門横断的人事異動もOK)、「職能ベース」や「役割ベース」の人事評価制度・賃金報酬制度を、全て「職務ベース」で「〇〇の仕事を、〇〇のレベルのスキルで行って、〇〇ができる人」というのに切り替えなければ、経営環境の変化に対応し「外部労働市場」も活用して、適材適所のプレースメントをスピーディに行うことはとてもできません。「〇〇という商社で〇〇部の〇〇課長をしていた人」という基準では、客観的に能力をはかるのが難しい。これまで日本の転職マーケットが欧米ほどポピュラーにならなかった最大の原因でもありますが、このハードルを乗り越えなければ、つまりは「米国型」の人材マネジメントの仕組みに方向転換をしなければ、「外部労働市場」を活用したジャスト・イン・タイムの人事は実現できないわけです。

 

問題はこれが自社に向いた組織人材マネジメントの仕組みかどうかということです。この仕組みの最大の長所は、最も環境適合能力の高い組織を最も早く作ることができるということです。しかしそれとトレード・オフに決定的な短所も生じる。それは、全てが「職務ベース」に変わるわけですから、これまでの日本型組織が培ってきた美質でもありますが、他人のミスをカバーしたり、組織の中での漏れていたり、これまで気付かなかったタスクを発見し改善するという様な、「個」の創意工夫が期待できなくなるということです。「職務ベース」であるということは、職務記述書に書いてないことは、原則として、行ってはならないということなわけですから…。

 

「組織の歯車」という言葉がありますが、米国型組織における「個」に比べれば、従来の日本型組織の「個」は、変な言葉ですが、ずっと“歯車度”が低い。職務ベースの米国型組織に「自律自走する人材」なんていうのは存在しませんし、むしろ在ってはいけない。米国型組織はまるで「レゴのブロック」の様に精緻かつスピーディに組み立てることができ、計算ができるものです。しかし計算以上には決してならないし、「個」の創意工夫、つまりは「人のチカラ」に基本期待をしない。それが米国型人材マネジメントの本質であるといえましょう。

 

これを自社に果たして取り込むべきか否か。それは各企業の置かれた経営環境の変化のスピード、それから何を武器に、どこの市場で自社を成長させていくかによるのだと思います。

 

また稿を改めて書きますが、日本で所謂「成果主義」を導入しても、大半が失敗に終わってきたのは、既述の様なフレームワークの修正も頭にないまま、「木に竹を接ぐ」様なことをやってきた、多くの人事マンの勉強不足によるところが大きい。そのことを書き添えておきます。

f:id:obanasr:20140520100123p:plain

いつもお読みいただきありがとうございます。

たくさんの方に読んで頂きたいので、

 ↓ のクリックをお願いします。

にほんブログ村 士業ブログ 社会保険労務士(社労士)へ

にほんブログ村