成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

個別労働関係紛争解決ADRは、企業(使用者)側にこそメリットがある。

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今日は個別労働関係紛争、いわゆる労働組合と使用者側の間の集団的労働関係紛争以外の労働紛争、のADR裁判外紛争解決手続)による解決は、一定の条件の下で、実は企業(使用者)側にこそ、活用するメリットがあるというお話をしようと思います。

 

もちろん労使紛争など起こらないのが一番良いわけですし、経営者の中には「そういうことを考えて仕事をするのは邪道だ。考えたくない」という方もおられますが、それは現代の経営者としてはあまりにもナイーブというか、リスクマネジメント感覚に乏しいと言わざるを得ません。

 

ネットによる労働トラブルをめぐる情報の拡散、ブラック企業問題をはじめとする労働問題についてのマスメディアの報道は5年、10年前の比ではありません。労働トラブルにも様々ありますが、平均して厚労省の窓口ベースの統計で、この10年に2倍~2.5倍に件数も増えています。別の統計では、50~100人の企業では、何らかの金銭解決が必要な労働トラブルがほぼ毎年起きているというデータもあります。

 

そういう状況下で、労働者側の申し立てによる行政型ADRや民間型ADRを活用した裁判外の個別労働関係紛争解決手続は、拘束力に問題があるにもかかわらず、ある程度定着し活用が進んできました。しかし、企業(使用者)側からの申し立てによるものは今もそう多くありません。ADRが拘束力に欠けるのは事実ですが、労働審判ならまだしも、訴訟となれば費用も掛かりますし、何より解決に要する時間的・精神的負担が半端ではありません。しかも当事者である労使双方が参加して行われた行政型ADRでは7割が解決に至っていますから、基本的にはこのシステムは企業(使用者)側にこそメリットがあるのですが、なぜでしょうか?

 

資力の問題を含め、労働者側が労働審判から訴訟へと持ち込むケースがまだまだ少ないこともあって、企業(使用者)側が高を括っている部分も少なからずあるのでしょう。しかし本来リスクマネジメントというのは、大けがを防ぐためのものです。仮に解雇問題で「訴えてくるわけがない」と高を括っていた労働者が、労働審判を申し立て、さらには訴訟となり、1審までに平均的な1年を要した上使用者側が敗訴したら、損害は本来の不当解雇の解決金が仮に月給の6月分で収まっても、その訴訟期間の1年の労働者側の賃金まで補償することになりますから、使用者側には最低でも3倍の損失が生じるわけです。おそらくはこうした事を助言・指導できる社労士が極端に少ないことが主な原因でしょう。社労士会や社労士会連合会が、労働者側に立ったADR活用一辺倒の広報を行っていることもそれに影響しているかもしれません。本当は企業(使用者)側のADR利用を促進した方が、特定社労士のADRにおける労働者側代理人の仕事ははるかに増えるのですが…。

 

それはさておき、企業の成長を考えるなら、ADRにおいて短期間に、なるべく損失を抑えた解決を図る方が得策であることは誰の目にも明らかです。経営者の皆さんは、個別労働紛争が仮に起こったら、自社の顧問社労士がどういうアドバイスをするか、それこそ一度シミュレーションをされれば如何でしょうか。「そういう時は直ぐに提携弁護士さんに連絡をとって対応してもらいます」という様な回答をする顧問社労士なら…。皆まで言いませんが(笑)、社外の人材も含んで、マネジメントチームの戦力を常に高め維持するのも経営者の重要な職責になってきているのは間違いありません。

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