成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

人事評価制度は「賃金報酬」の分配ルールではない!

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中小・ベンチャーの経営者に、「人事評価制度」を構築する第一義の目的は「賃金報酬を決めるため」にあるのではないと言ったら、普通は驚かれるのではないかと思います。今日はこの件について書きたいと思います。

 

大企業の場合、経営者は将来の幹部として必ずと言ってよい程どこかのタイミングで人事部門を経験していますし、人事部門のマネージャーは「人的資源管理(人事労務管理)」の理論を学んでいますから、「人事評価」の第一義の目的が「組織目標の理解と浸透」「従業員・役員の能力開発と育成」であると言っても、すんなり話が通じます。

 

しかし中小・ベンチャーの経営者、特に叩き上げで年商5億、10億とビジネスを大きくしてきた創業経営者に同じことを言った場合、おそらくピンとくる人が1~2割、ピントこない人が8~9割で二つに分かれるでしょう。「ゼロから1を生み出す」才能と努力に優れたこうした創業経営者の内、自らの企業をさらに年商数十億以上のメガベンチャーや中堅企業に育てられる経営者は、仮に人事経験がなく、「人的資源管理(人事労務管理)」の理論など学んでいなくても、ピンとくる。その一方で、ピンとこない経営者はそこが天井で、自らの衰えとともに会社の業績も下降線を辿る。勿論例外もありますし多少粗っぽいですけど、これは結構的を射ているのではないかと思います。「ゼロから1を生み出す」能力は「人事評価制度」で創り出せませんが、「1を100にする」にはそれは強力なツールになります。

 

大いなる誤解なのですが、中小やベンチャーで「人事評価制度」の話を始めると、「それならもう有りますよ」と言って「賃金報酬制度」の話をされる経営者や管理部門の責任者によくお会いします。先に述べた「ピンときていない企業」とこういう企業はピタリと重なります。

 

経営者とメンバーが常日頃顔を突き合わせている規模でなくなると、「経営者の判断でその都度賃金を決める」というのは通用しなくなります。めったに顔も合わせない経営者の判断で報酬を決められても納得がいかないという不満の声も上がってくる。ですから一定規模になると、どこの中小・ベンチャー企業でもとりあえず「賃金報酬制度」らしきものは作ります。ただ伸びない会社はそれで終わり。そういう会社にとって人事制度とは、賃金分配のルールでしかないですから、人事考課とかフィードバックとか、そんなことに手間暇を掛けていられません。

 

でも伸びる会社は、制度設計と運用がまるで違います。もちろん「賃金報酬制度」は作るけれども、それは「人事評価制度」とはあくまで別物です。評価制度は、まず「組織目標の理解と浸透」「従業員・役員の能力開発と育成」のために設計・運用される。その評価制度に則って手間を厭わず人事考課(評価活動)した結果を、企業の置かれた環境に応じて一定のルールで、「賃金報酬制度」にも反映させるという形をとります。

 

どんな「人事評価制度」を作るかは、企業毎の内部環境や外部環境、経営ビジョンや戦略との結び付け方によって当然違ってきます。共通しているのは、組織目標の達成および企業業績の向上に沿った人材育成と柔軟な人材登用を担保するため、コンピテンシー(高業績者の行動特性)を中核にした評価軸で制度を作り、考課者に幅を持たせたり、考課結果のフィードバックとそのフォローに手間暇をかけたりすることです。それだけのことをしても、単なる賃金分配のルールではなく、個人の能力向上と組織の目標達成への動機付けシステムですから、それはやがて利益を生む。十分に元をとっておつりがくるわけです。これが持続的な成長を促していく。

 

その意味で、優れた「人事評価制度」を作ることは最近の流行語では「プロフィット・デザイン」そのものです。これを直観できるリーダーに率いられた組織は強い。今伸びていて今後も持続しそうな企業には、そういう企業が多いと私は考えています。

 

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