成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

「過重労働」と「マタハラ」。2016年の労務管理の重大テーマにどう取り組むか。

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まだ、一月丸々残っているわけですから、少し気の早い気もしますが、今夏から直近までの労働問題のメディアでの取り上げられ方を見ると、来年2016年の労務管理の重大テーマは「過重労働」と「マタハラ」かなという気がしています。安倍政権の出方次第ではこれに「金銭解雇」が加わって3大テーマといことになるかもしれません。

 

「金銭解雇」については、必ずしも労働者に不利にはたらくとは限らず、私個人としては「条件付き賛成」なのですが、上手な制度設計をしないと、逆に使用者側で大企業にのみ有利に働き、中小企業には大きなダメージを与える可能性があるという見通しを立ています。それは何故か。かなり長い論説で書くことになると思いますので、これは稿を改めることとします。なので、今日は「過重労働」と「マタハラ」について。

 

「過重労働」については、東京労働局と大阪労働局に今年4月新設され、ベテラン労働基準監督官をそろえた通称「かとく」、「過重労働撲滅特別対策班」という組織が、早速、流通小売、外食などの上場企業を中心に続々摘発を行っています。36協定違反のある上場企業をスケープゴート的に狙い撃ちにしている感がありますが、これが2016年は各労働基準監督署レベルの動きに波及するものと見込まれます。

 

当然ながら各監督署の管轄ということになれば、上場企業だけが対象ではなくなるでしょう。36協定周りの見直し、実働労働時間と厚労省過労死基準との関係、業務効率化と残業削減など、労務管理の喫緊の課題としてこの問題が浮上してくることは間違いありません。採用環境も厳しい中、これをどう乗り切るか。業種によってはかなりハードルの高い問題です。

 

現状既に業務がオーバーフロー気味という企業では、全社的な取り組みとして動かなければ、解決は難しいかもしれません。

 

一方「マタハラ」については、妊娠に伴う降格を争った訴訟の最高裁差し戻し控訴審で、労働者の主張が認められたこと、それに先立って厚労省がマタハラ防止の通達を出したことなどから、今一番熱い労務管理上のトピックスと言えるかもしれません。

 

但し、罰則を含む法改正の議論も起きている様ですが、現状この問題は既述の36協定違反などと違って、民事上の労働紛争としてリスクが顕在化するものですから、大企業を除いては反応が鈍いというのが、特定社会保険労務士としての現場感覚です。

 

しかし、いかに民事上の問題とは言え、一定数の女性従業員が在籍する企業であれば、中小、中堅と言えども直ぐに直面する労務管理上のテーマであることは間違いありません。通達が求めるところの妊娠前後の女性労働者に対する不利益取り扱い原則禁止は、かなりハードルの高いものです。企業規模によっては、全く不利益にならない取り扱いというのは現実に困難かもしれません。であればこそ、紛争化回避のための相談窓口の設置等、ソフト面での工夫を早めにしておかないと大きなリスクが降りかかります。

 

「過重労働」にせよ「マタハラ」にせよ、経営的には後手に回ると計り知れないダメージを被ることになります。リスクの過小評価が恐ろしいわけですから、我々社外の専門家は単に警鐘を鳴らすだけでなく、人事労務担当者の意識改革に地道にアプローチしていくことが益々大切になってくる様な気がします。

 

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