成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

「欠員補充の採用こそコストだ」。だから伸びるIKEAの人材投資とESI人事。

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多くの流通小売でもパート従業員の正社員化は進められていますが、イケア(IKEA)・ジャパンでも9月から2400人のパートを正社員化するとともに新人事制度を開始したそうです。それは、純日本型でもなければ、米系企業にありがちな「アメリカン・スタンダードに合わせろ」的な強引なものでもない。合理的で、これぞ「真のグローバル人事」という印象を与えるものです。

 

流通小売という業種・業態による部分も大きいのだろうと思いますが、“Believe in people”という共通目標の下に、パートタイム従業員とフルタイム従業員の間に労働時間以外に違いを設けない構えをもって、一人ひとりが能力を発揮し、自ら成長するための投資を惜しまない。そう現イケア・ジャパンCEOのピーター・リスト氏は語っています。

 

同一労働同一賃金や福利厚生の平等、育児・介護などライフステージに応じた働き方といったグローバル人事のベースを押えながら、日本の労働環境を2006年の進出時から研究してきた成果を活かし、日本全体の正社員化の動きにあわせて実行している今回の人事改革には、他の日本企業の正社員化の様な「泥縄感」がありません。

 

そうしたアクションの基礎にあるものが、EQUALITY(平等な機会創出)、SECURITY(長期的な関係構築の保障)、INCLUSION(多様な人材の受容と活用)だと言います。「ESI人事」ですね。

 

アルバイトやパート社員がトップマネジメントにまで上り詰めた例というと、ブックオフ吉野家が挙げられます。こういうのは日本の流通小売業やサービス業ならではと思っていましたけれど、イケアの前CEOミケル・オルソンもパートタイマー出身だったそうで、パートタイマーからの昇格は本国スウェーデン以外でも珍しくないというのがイケアのカルチャーだそうです。

 

そして何よりびっくりしたのが、「あくまでも長期的な投資という視点で(人事)を見ているので、前年の人件費に対して何%上がるという観点は持っていない。むしろ従業員が辞めて新たに採用を行うことを、大きなコストと捉えている」というピーター・リスト氏の言葉です。

 

このブログで「『退職コスト』思考が企業を救う!」「『退職コスト』再考。超人手不足時代の『できる経営者』は、まず組織の『保全』『再起動』に注力する。」の2度にわたって、「退職コスト」=「欠員補充コスト」がいかにダメージが大きいものかを書きましたけれど、リスト氏も全く同じことを力説しています。

 

元々メインストリームが「終身雇用」であったがゆえに、「退職コスト」は日本型の人事労務管理がこれまで見過ごしてきた視点ですが、終身雇用が崩れたり、もともとそれが堅固でない中小企業やベンチャーでは、これにしっかり留意しておくことが大切です。

 

やはり26か国にも進出している小売業のマネジメントは深い。グローバルなのに、日本的な要素もある。こうしたIKEAの人的資源管理、「イケア・ウェイ」には、これからの日本企業が大いに学ぶべき部分があると再認識しました。

 

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