成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

「すき家」労働環境改善に関する第三者委員会。「ビジネスモデル」「組織人事」のプロ不在では意味がない。

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ブラック企業大賞」のノミネートを避ける様に7月31日、「『すき家』の労働環境改善に関する第三者委員会」の調査報告書が発表されました。

 

 提言に書かれていることは至極ご尤もなものですし、どれもこれも実行した方が良いものであるのは間違ありません。しかしやはり大切な事が抜けているなあ、と言う印象は拭えません。

 

企業法務に通じた弁護士2名と「経営倫理」の専門家1名という構成によるところも大きいのだと思いますけど、「ビジネスモデル」という言葉使い方もおかしいですし、外食産業においてその「ビジネスモデル」を動かしていくベースになる「組織観」「人材観」というところには全く踏み込めていないというのが報告書全体を通じての感想です。

 

まず「ビジネスモデル」の方ですが、報告書の「第7 最後に」に「『外食世界一を目指す小川 CEO の下に、その志の実現に参加したいという強い意志をもった部下が結集し、昼夜を厭わず、生活のすべてを捧げて働き、生き残った者が経営幹部になる』というビジネスモデル」という表現がありますが、こういうのは一般に「ビジネスモデル」とは言いません。これはすき家というかゼンショーグループの「人材観」を書いているだけです。

 

もし、すき屋およびゼンショーグループが成長してきた「ビジネスモデル」の本質を短い言葉で表現するなら、「デフレ対応型のコストリーダーシップ戦略に基づくビジネスモデル」であったわけで、「ビジネスモデルの限界」と言うなら、それが限界にきていると指摘するべきでしょう。

 

実際ゼンショーグループが規模としては「外食日本一」であっても、既に外食産業の潮目は変わっています。ゼンショーと真逆と言ってよい戦略を採り、ファミレスのどん底からV字回復している象徴的な企業が「すかいらーく」です。「すかいらーく」の復活は、「空腹を満たす」から「わざわざ店にきてもらう」というポジショニング獲得のため、人のあり様、店のあり様を抜本的に見直すことから始まっています。そしてその結果として経営陣も一新されました。

 

もちろん、ゼンショーグループと「すかいらーく」では中心業態も異なりますし、現時点でのポジショニングは異なるわけですが、現時点で時代とシンクロしていのは、間違いなく後者でしょう。

 

そしてそうした「ビジネスモデル」の転換を可能にするものこそ、報告書では「ビジネスモデル」と表現された「組織観」であり「人材観」なわけです。「人材」をP/Lベース、つまりはコストとのみ捉えるか、コストではあるけれども、B/S上に計上されてはいないながら、長年にわたって機能する「見えざる資産」と捉えるかで、展開できるビジネスは当然に変わってきます。

 

高単価・高利益率のビジネスをなし得るのは「熟練の人材」であり、「自律自走する人材」です。それは「見えざる資産」があってこそ、はじめて機能します。ゼンショーグループの目指す方向が「すかいらーく」と異なるものであっても、この原理自体は変わらない。それを報告書に書かなくては、おそらく大きな変化は望めないでしょう。

 

形ばかりの報告書作成と禊でないのであれば、やはり「労働環境改善に関する第三者委員会」という限りは、「ビジネスモデル」のプロと「組織人事」のプロ、少なくともあと二人はいないと、満足な結果は導けないのではないか。そう私は思います。

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