「ダンバー数」を意識した人材マネジメント。ホールディング×分社化、アメーバ経営の効用には理由がある。
イギリスの人類学者、進化生物学者であるロビン・ダンバーが定式化した「ダンバー数」は、人間にとって平均150人(100~230人)が「それぞれと安定した関係を維持できる個体数の認知的上限」であるとするものです。
私もこれについては、経験的には非常に妥当な説だと思っています。大学卒業後、最初に働いた職場が、マンションデベロッパーという地域密着性の高い業種であったため、全社では1000~2000人の従業員規模だったと思いますが、新入社員で配属された大阪支社でおそらく200名前後、大阪に駐在する常務取締役が管掌する京都や神戸の支社、必要に応じて設置される近畿圏内の支店の人員を合わせても300人くらい規模で、これがほぼ独立した会社の様に機能していました。これくらいの規模だと人間関係に濃淡はあっても、組織としての一体感を組織メンバー個々が保つことができます。その後、私は東京の本社へ異動となり、管理本部というところにおりましたが、本社だけで500人超、首都圏の各拠点の数百名のメンバーとは滅多に顔も合わせないという様な環境になると、メンバー個々の一体感も薄れ、協働意識も希薄になって行った記憶があります。
今にして思うと、ダラッとしたヒエラルキーで本社と拠点が繋がっている組織のまま肥大化していくことは、「ダンバー数」から大きく乖離することになって、「それぞれと安定した関係を維持できる個体数の認知的上限」というのを大きく超えていた様な気がします。「組織を明確かつ意識的に割る」という作業は、組織を活性化していく上で、経営上重要なアクションであるのは間違いなさそうです。
古くは京セラのアメーバ経営、最近で言えばリクルートグループのホールディング×分社化といった組織のあり方も、そういう視点で見ると「ダンバー数」の思想と符合する様に思います。
個人のパフォーマンスを維持するというに留まらず、「組織を割るという」作業が、経営においては、結果的に「グループ内に多くのリーダーを輩出する」「事業ユニット間の競争を通じて刺激を与え合う」という効用をももたらす。その意味では、とりわけ「ダンバー数」は経営管理との相性が良さそうに思います。
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