成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

「女性登用義務化」の本末転倒と求められるパラダイムシフト

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安倍政権では新成長戦略の一環として、国や地方自治体、企業に対し、女性登用の目標や行動計画の策定、公表の義務化を求める法案を、来年の通常国会に提出する見込みであるというニュースが流れました。

 

OECDからの指摘については以前にも書きましたが、労働人口の減少する中で女性が働き続けられる環境整備が急務であるのは間違いありません。キャリアの中断が少なくなることは、結果として女性管理職の母集団を増やし、自ずと女性エグゼクティブの輩出率を高めていくに違いありません。女性登用に積極的な企業を評価する指針を国や自治体が策定し、公共事業などの受注機会増加を図るというニンジンもぶら下げる様ですが、まさか罰則を科すわけにはいきませんから、「女性登用義務化」という数値目標の設定そのもののに、それほど大きな意味と実効性があるとは私には思えません。

 

それよりも、この数値目標の設定とセットにして政府が打ち出している助成策があまりパッとしません。

 

①育児・家事支援策として、共働き家庭などの小学生を放課後に預かる放課後児童クラブ(学童保育)の定員枠を2019年度までに30万人分拡充するための「放課後子ども総合プラン」を年央に策定。自治体に実行計画の策定を求める制度改革を年度内に行う、

②保育園などに入れない待機児童解消に向けては、「保育士確保プラン」を年内をめどに策定。育児経験のある主婦らを対象に、保育士をサポートする新たな公的資格「子育て支援員」の創設も盛り込み、家事サービス業者からなる推進協議会を設置して、安価で安心なサービス体制の構築を支援する、

といったものですが、確かに大事ではあるものの、女性のキャリア継続を強力に後押しする様なインパクトはどれもありません。

 

本当は「介護」についても触れないといけないのですが、それは別稿に譲るとして、「育児」だけで考えても、もっと抜本的な支援策がないと事態は大きく変化しないと思われます。

 

学童については政府の施策の様に「地域」で支える仕組みの拡充で良いと思いますし、そこにNPOの力を活用していくことができれば、現実に対応可能でしょう。しかし未就学児の保育に関しては、基本「職域」で行うことができる仕組みを確立しないと安心して働くことは難しいのではないかと思います。

 

先進的な取り組みであるGMOグループの「Bears」の様に、社内保育所を1社で備えることは難しくとも、事業所立地で共同保育施設を確保することは、一定の支援があれば不可能ではありません。そうでなければ女性が安心して働く環境はなかなか作れれないでしょう。予算を投じたり、企業に一部負担を求めるなら、そうした大胆ながら実のある施策を導入することが欠かせないと思います。

 

そもそも「女性登用」に向いた職場も、そうでない職場も現実にはあります。機会均等は大原則ですが、一律に数値目標を設定して義務化するなんていうのはまるで「全体主義」です。そんなことより、女性登用で伸びる企業を一社でも多く輩出し、女性活用に消極的な前時代的な経営者が、現実的なメリットを目の当たりにすることによってパラダイムシフトする状態を実現した方が、余程実効性がある。そう私は思いますが如何でしょうか?

 

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