成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

「裁量労働制拡大」が「労使関係」を破壊する。

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昨日も書いた「労働時間規制緩和」で情報が錯綜している様です。産業競争力会議の議論について、朝日、毎日がバラバラの報道をしていますので。ここまでの解説と見通しを書きたいと思います。

 

朝日新聞「『残業代ゼロ』案修正へ 幹部候補に限定、年収は問わず」と報じ、毎日新聞は昨日の続報で、「〈高度専門職〉労働時間規制なし…厚労省、容認に転換」と書いています。両方ともお読み頂きたいのですが、多分人事マンや社労士でないとなかなか理解できない内容です。まだどうなるかわかりませんが、話を総合して、現時点での議論を要約すると以下の様になります。

 

安倍首相が議長を務める産業競争力会議で「労働時間規制緩和」が議論される中、新自由主義者一色の議員、特に民間議員から広範な労働者を対象にする残業代支払いの適用除外案(あるいは労働時間の所定労働時間みなし案)が提案され、それに対して当初は「年収1000万円基準」で歯止めをかようという着地だったのだと思います。これに民間議員側の強く反発し、「裁量労働制の対象業務(対象労働者)拡大」と「年収規制のない“幹部候補社員”(極めていい加減)を対象とした残業代支払の適用除外(あるいは労働時間の所定労働時間みなし案)」に話をすり替えた。仕方がないので厚労省側が折れて、後者は「年収数千万円の世界レベルの高度専門職(為替ディーラー、ファンドマネジャー等)」に押し返す一方、「裁量労働制の対象業務(対象労働者)拡大」は受け入れるというのを落とし所にしよう。そういう結論になりそうです。

 

予定調和というか、まるで吉本新喜劇を観ているみたいで、これはシナリオ通りなんでしょうが、昨日のブログにも書いたように、現状でも適法適正に運用されているとは言い難い「裁量労働制」を一般の営業マンや経理・財務・総務・人事の一般社員に拡大するなんて言うのは、必ずいずれ「労使関係」崩壊をもたらすと私は思います。厚労省の妥協のポイントは逆なんです(確信犯かもしれませんが…)。

 

昨日も書いたように労働基準監督官の人数を10倍に増やして、本来監督官が持っている司法警察権の行使を容易にする様なこととワンセットにでもしない限り、この「裁量労働制の拡大」は「ブラック労務」の温床になります。そして短期的には今回の様な規制緩和が企業に利益をもたらしたとしても、労働人口の急減する中長期では対立的な「労使関係」から必ずその何倍ものしっぺ返しを企業はくらいます。

 

そのしっぺ返しが来る頃に、既述の産業競争力会議のメンバーの内、現役で活躍している人が果たして何人いるでしょう?どうせ三木谷さんくらいしかいない。でもその時、彼が日本で事業をやっている可能性はそう高くはないでしょう。

 

要するに「問題先送り論理」と「脱日本の焼畑農業論理」が「労働時間規制緩和」という日本の若者の将来を左右する問題を決めようとしている。その事に一般の人間ももう少し自覚的でなければいけないと思います。特にお子さんをお持ちの方であれば…。

 

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