「労使関係のデザイン」が決める組織の行く末
ブログ再開後、「採用」それも特に「新卒採用」を中心に書いていますが、今回はちょっと総論的なお話を。
今私が社会保険労務士という仕事をしている理由は、もちろん様々な背景・出来事の積み重ねによるわけですが、やはり一番大きな理由は、1980年代の終わりに、わずか数年でマンション供給首位の大京を脅かす程に急成長していたリクルートコスモス(現コスモスイニシア)という当時リクルートグループのマンションデベロッパーに新卒入社したことにあると思います。
リクルートで培われた他企業とは一線を画した組織人事の運営ルール、もっと煎じつめれば「労使関係のデザイン」は、今でこそ他の成長企業でも様々に模倣され、改良されて多少は広まっていますけど、80年代末では全く異質のオンリーワンでした。
四半世紀前の日本的経営というか、日本的人事労務管理の中核は、企業による濃淡はあっても一言で言ってしまえば、「滅私奉公」と引き換えの「年功序列」「終身雇用」であったろうと思います。そういう時代に「卒業(将来の独立等)歓迎」「逆S字の賃金カーブ(若年層の給与水準が高い)」「『自ら機会を創り出し機会によって自らを変えよ』に集約される徹底的な自律自走の組織風土」という、次代を先取りする「労使関係」をオルタナティブとして持ち込んでいたのですから。
紆余曲折があったとは言え、リクルートのDNAが、そこから巣立った起業家たちの成果も含めて、今日の日本のビジネスの何割かに影響を与えているという認識に、異を唱える人は少ないでしょう。その背景にあったのは、誰にも真似ることができたビジネスモデルではなく、誰にも真似ることができなったこうした「労使関係のデザイン」による推進力であったということです。
今日では人材ポテンシャルを掘り起し顕在化させる「労使関係のデザイン」が、リクルートやそのOB・OGが関わる企業以外の様々な会社からも出てきています。そして10年スパンで持続的な成長企業を果たしている企業で、そこに着目していない、手間暇をかけていない企業というのは、おそらく皆無ではないかと思います。
ビジネスモデルも先端技術も腐りやすいですが、組織の行く末を決める「労使関係のデザイン」は、環境変化に合わせたマイナーチェンジは必要でも、結構射程が長い。それがあれば、新たなビジネスモデルや先端技術を生み出す組織内のポテンシャルの顕在化はいつの時代も可能という理路に、もっとスポットライトが当たっても良い様な気がします。