成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

「新卒一括採用」は世界に誇るべきメイド・イン・ジャパン

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何回か「採用」について書こうと思います。まずはそのプロローグとして、日本の人事管理の特徴である「新卒一括採用」から。

 

リーマンショック後の就職氷河期に、世代によって経済環境に大きく影響を受ける「新卒一括採用」に対して問題提起が噴出。既卒2~3年の若年者も採用対象にする企業が増えるなど、多少のアジャストがなされる様になりました。しかし、だからと言って「新卒一括採用」自体が揺らいだわけでは全くありません。

 

脳科学者の茂木健一郎をはじめ、「新卒一括採用」が「日本のクリエイティビティを殺いでいる」とか、 そんなことだから「グローバル人材を輩出できない」とか、挙句の果てには「だから日本からスティーブ・ジョブスは生まれるはずがない」などと、様々に飛躍した「新卒一括採用」非難を行う文化人や有識者は後を絶ちません。それにもかかわらず、「新卒一括採用」が大きな変化の兆しをみせないのは、それが企業にとって非常に便利な「慣行」であるからです。

 

最近は通年採用という企業も少なくなくなりましたけど、それでも採用活動に繁閑があり、年間スケジュール化ができることのメリットは計り知れません。まずその「効率性」が支持される第一の理由です。第二に、ネットによる学生のエントリー数の増大が問題視されますけど、結局ほぼ横並びのスケジュールで採用活動が進行しますから、実際に優秀な人材とコンタクトできる機会は物理的にある程度分散・均等化されるという「平等性」。これも「新卒一括採用」が支持され続ける背景と言えましょう。

 

それに加えて、あまり語られない「新卒一括採用」の企業メリットは、私の造語ですけど、“サイレント・リストラクチャリング”です。数年前大手電機メーカーなどで、業績低迷から、コストの高い中高年へ大規模早期退職の呼びかけが行われ、その翌年とか翌々年には同じメーカーの「新卒採用を対前年比倍増」という様な記事が新聞を賑わせましたが、誰もこれを非難しません。むしろ新卒買い手市場のここ数年の風潮から言えば、社会的には「歓迎」されるべきことなわけです。「新卒一括採用」を時間差で紛れ込ませるからからこそ、静かにリストラが完遂できるというわけです。

 

若年層に就業の機会を遍く提供し、その中から有為の人材が輩出されてくるという社会的視点に立っても、否、企業メリット以上に社会的要請として「新卒一括採用」は支持されます。仮に「新卒一括採用」が日本から消えてなくなり、欧米の様に「定年廃止」「欠員補充型採用」が一般化したら、間違いなく日本の失業率は10%を超えることになるでしょう。その皺寄せは100%若年層に向けられ、若年層は職業経験を経ずに年齢を重ねることになるわけです。そんな社会が健全でない事は、今のヨーロッパを見れば明らかです。

 

もちろん「新卒一括採用」のある程度の修正は必要です。既卒者の選考対象化もそうですけど、不況期から回復した時期に、積極的に「第二新卒」の実施を促進する様な仕組みや慣行の醸成は、いつもピント外れな労働行政にも少しは考えてもらいたいものです。

 

もちろん「できる経営者」は、行政などよりずっと先回りをして採用に関しても、きめ細かなところに手を入れています。

 

先日話す機会のあった中堅商社の40代社長は、3月末に10名の新卒者に「内々定」を出したそうです。彼の今年の内定者への感想は、「今の若い奴はなかなかやるよ。最終選考に残って来る様な学生は卒がないし。何とか半分くらい歩留まり(内定者の半分くらいが入社)してくれればなぁ」という期待に満ちたものでした。それに続けて「リーマン後の氷河期就活世代向けに『第二新卒』を大々的にやろうと思うてるねん」と彼は話してくれました。

 

「新卒一括採用」のメリットを十分に解し、それにしっかり取り組みながら、採用ブランドで大手に劣る部分を補完する手立てを常に考えている。これぞ「社長の仕事」というのをやっている。彼の会社が伸びている理由がよく分かりました。 

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