成長企業の労使関係デザイン@特定社労士

リクルートグループに学び、ITベンチャー・急成長メーカー・創業100年商社で試した、大阪・梅田の実践派特定社労士が労使関係管理と人事労務管理の極意を伝授!「組織の成長」と「個人の幸福」の相互作用が未来を創る!!

ベンチャー&中堅・中小企業の労務リスクは益々増大。IPOのコンプライアンスチェックでも主要テーマに。

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企業の労務リスクの増大はとどまるところを知りません。

 

立法府ではホワイトカラーエグゼンプション裁量労働制の拡大の方向で労働法規制の緩和が進む一方で、東京、大阪の労働局に置かれた「かとく」過重労働撲滅対策班がABCマートの36協定違反を摘発・書類送検したり、裁量労働制下にある労働者の過労死が認定されたり、訴訟でおなじく裁量労働制下のシステムエンジニアの勤務実態が裁量労働にあたらないとして未払残業代請求が認められたりと、行政、司法の判断は、使用者側に厳格なものとなってきている様に思われます。

 

良し悪しは別にして、事前規制型社会から事後規制型社会へのシフトというのが、労働問題においては、一層色濃くなってきている様です。

 

こうした動きの中で、得をするのは基本的に大企業です。大企業の場合、労務管理はもちろん完璧とは言えない者の、法令違反は原則そんなに多くはありません。既述のABCマートの件などは、確かに法令違反ですし、取り締まられるべきことですが、残業代に未払があったわけではありませんから、他にもっと悪質な会社無いかと言えばそうではない。まあ、ある意味これは見せしめとして「かとく」のプロモーションに使われたという印象が拭えないもので、むしろ例外的なケースです。ですから立法で規制を緩めてくれれば、そのまま利益につながる。多くの大企業ではそうなのです(というか大企業有利に安倍政権が法改正を進めているだけです)。

 

一方、ベンチャー企業や中小・中堅企業は、社内整備も十分ではありませんから、立法で労働法規制が緩和されるメリットより、行政の事後チェック厳しくなったり、司法の判断が労働者よりになっていくことのデメリットの方がはるかに大きいわけです。

 

中小・中堅・ベンチャーで労働紛争が生じ、その解決に数百万~数千万円の金銭が必要となることは珍しくなく、それは経営上死活問題である場合もあるでしょうし、仮に経営上クリアとなっても、公開の司法手続であるところの訴訟で広く世の中に労働トラブルの存在が知られることになったら、その非が使用者側に無くても、人事採用他に多大なダメージを受けることは明らかです。

 

私は何度か株式新規公開の準備の仕事をしましたが、おそらく証券会社および東証の公開審査上、今日ほど、労務コンプライアンスにフォーカスがあたったことは、かつて無かった様に思います。成長途上にある中小・中堅・ベンチャーIPOを意識することは当然多いわけですが、公開審査上の主要テーマとして労務コンプライアンスが急浮上してきた背景には、ワタミ問題ほか、隆々とした上場企業でも労務問題を起点に業績不振、株価下落へ一気に転がり落ちる事例が散見されるようになったからに他ならないと考えています。

 

上場して間もない企業が労働問題で叩かれたら一溜りもない。だから厳しく上場前にチェックしよう。それが今のIPO周りでのトレンドの一つになっていることは間違いありません。

 

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オーナー経営者のための組織人事管理② 「ダウンサイジングとアウトソーシングという選択」

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前々回の記事では、ファミリービジネスの組織人事面での功罪を書きました。

 

人材という経営資源は、ジャスト・イン・タイムで売り買いできるものではありません。また、国によって違いはあるものの、一定の労働法規制の下に労働市場が置かれているわけですから、組織人事の環境即応というのも、そうそう上手くはいきません。

 

その結果、パブリックカンパニー(株式公開企業)では、比較的短期の業績評価が株主の声として上がってきますから、オーナーシェアが低ければ、日本の場合では「希望退職募集」等のリストラ策、「早期退職制度」の整備といったアクションプログラムが恒常化するわけです。

 

一方、ファミリービジネスの場合は、理屈上はそういった近視眼的な組織外の声に左右されることはありません。トップマネジメントが、能力の如何にかかわらず、特定の人々によってしか担われないという、ある種の不健全さはあるものの、トップの判断一つですから、企業の存続にかかわる様な極端な業績不振に陥るまでは、「希望退職募集」「早期退職制度導入」の様なオプションはあまり検討されません。ですから、多くのファミリービジネスは、意外にも「人員過剰」になりがちと言えます。

 

その代りファミリービジネスの場合、「無い袖は振れない」わけですから、労働条件が悪化する、恒常的に労働条件が低水準に留め置かれるというケースが少なくないわけです。

 

しかし、これまではそれでやってこられたとしても、今後の労働人口減少社会では、いくら縁故採用が多いファミリービジネスでも、それでは組織が立ち行かなくなります。

 

そこで頭に入れておかないといけないのは、規模の追求を第一義にしないファミリービジネスなら、ダウンサイジングアウトソーシングを「戦略的」に使いこなすということではないかと思います。

 

ファミリービジネスの良さでもある、目の行き届きやすさを最大限に活かして、要になる人材をコア業務に少数精鋭で配し、同時に手厚く遇する。そのため時にはノンコア業務の「ダウンサイジング」も選択肢に入れ、切り出し可能な業務については、「アウトソーシング」を積極活用するという様なことがそれに当たります。

 

ファミリービジネスの組織人事管理は、そういう意味において、大きな曲がり角に来ています。まだこれに気付いているオーナー経営者は多くありませんが、優良な中小・中堅企業でも、人材不足で屋台骨が揺らぐといったことが、今後は現実の問題として浮上するケースも少なくないかもしれません。

 

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